発達障害の原因って農薬? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第13回)

パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター
はい、どうも皆さんこんにちは。農業コミュニケーターの渕上桂樹です。今日も渕上ラジオやっていきたいと思います。
発達障害の原因って農薬? 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第13回)はこちらから聴けます
「農薬のせいで発達障害が増えている」は本当?
これまでにもいろいろなお話をしてきましたが、以前「オーガニック給食」という、ちょっとしたブームのようになっている話題について取り上げました。
「オーガニック給食」は、「子どもたちに安心・安全な食を」という考え方のもとで、各地で広まりつつある運動です。流行のような側面もありますが、別にオーガニックでないものが危険というわけではありません。そこは誤解があるので、情報を正しく理解してほしいというお話をしました。
私が少し問題だと感じているのが、「オーガニック給食で発達障害を防ごう」というような主張が出てきている点です。なかには「残留農薬のせいで発達障害が増えている、それを防ぐためにオーガニック給食にすべきだ」といったことも言われています。
私は、これは言わない方が良いと思います。
発達障害の診断数が増えているのは、診断基準やサポート体制の整備によって「見つけられるようになった」からであって、農薬や食べ物の影響で急増しているというものではありません。
教育現場で誤解を生まないために
それを「農薬のせいだ」「食べ物で改善できる」としてしまうと、教育現場で発達障害への誤解が広がってしまう。それが一番心配です。
発達障害は、人それぞれの発達の仕方が異なるという特性の話であって、食べ物でどうこうできるものではありません。生きづらさを感じている子どもや大人がいたら、必要なのは「食の改善」ではなく、適切なサポートです。
「食で改善」ではなく「支援で共に生きる」社会へ
「食べ物で改善しましょう」と言い出すと、全く的外れな話が広まってしまいます。そうなると、色々な発達の仕方を持つ人が生きやすい社会を作るという本来の目的から、むしろ遠ざかってしまうと私は思います。
オーガニックを勧めること自体は全然構いません。でも、「オーガニックを食べれば発達障害を防げる」という言い方はやめた方がいいと思います。
もしも、医学的な根拠や、発達障害の当事者支援に携わる人たちの立場から「オーガニックの効果がある」という話が出てくるなら別ですが、実際に現場では「食べ物で改善しよう」という話はほとんど聞きません。
「食べ物のせい」は誰も幸せにしない
以前、私は「発達障害の原因を食べ物やオーガニックに結びつけるのは違う」というコラムを書いたことがあります。すると、農家の方々から「食べ物のせいと言われてつらかった」という声をいただきましたが、それ以上に切実だったのは発達障害の当事者やその親御さんたちからの反応でした。
その方々が集まる定例会に参加させてもらったこともありますが、「何を食べたら改善する」といった無責任な発言は、親御さんたちを非常に苦しめるそうです。「そんなこと言わないでください」と感じている方が多いという現実があります。
ですから、「食で改善できる」といった不確かな情報は発信しない方がいい。
当事者や親御さんたちからもそういった意見があります。だからこそ、私はこうしたことを皆さんにお伝えしています。
本当に大切なのは「共に生きやすい社会を作ること」
本当に必要なのは、食で改善を目指すことではなく、色々な発達の仕方を持つ人がそれぞれ生きやすい社会をどう作るかを考えることだと思います。
「何を食べたからこうなった」といった話を学校や教育の現場でしてしまうと、偏見を助長することにもつながります。
というわけで、今日の渕上ラジオでは「発達障害の原因を農薬や食べ物のせいにするべきではない」というお話をしました。
渕上ラジオでは、皆様からのご意見・ご感想を募集しています。
私、渕上桂樹のSNS『X』、匿名質問サービス『mond』にてメッセージを受け付けております。
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
イラストレーション:竹村おひたし