2025.10.3

左翼も右翼もオーガニック信仰 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第11回)

渕上桂樹

農業コミュニケーター

オーガニック信仰

パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター 

どうも皆さん、こんにちは。農業コミュニケーターの渕上桂樹です。というわけで、やってまいりました渕上ラジオ。今日もイシュラボの番組、渕上ラジオから皆さんにお届けいたします。

左翼も右翼もオーガニック信仰 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第11回)はこちらから聴けます

この番組も始まってしばらく経ちますが、いろいろと皆さんからの質問にお答えしたり、時事的なお話を取り上げたりしてきました。

オーガニックは安全なのか?

その中でも、オーガニックについてお話しした回が結構反響がありました。オーガニックそのものは良いと思うんですが、「オーガニックの方が安全で、そうじゃないものは安全じゃない」といった、ちょっと信仰のような、宗教的なニュアンスのある考え方に対して、この番組では「実際はこうだよ」という補足説明をしてきました。

オーガニック信仰とは?

もともとオーガニック信仰というのは、イデオロギー的なところから発信していることが多く、かつてはリベラル、いわゆる左派の人たちがよく使っていた印象があります。私自身、講演会などに呼ばれてオーガニックについて話したとき、左派の思想と結びついているなと強く感じたことがあります。

オーガニックを推進する団体の中には、科学的ではない団体もあり、それをそのまま票集めに利用しているように見えました。もちろんそれ自体は自由ですが、内容的には被害妄想的で、「私たちは安全ではない食品を食べさせられて被害者なんだ」という意識から始まっている印象を受けました。

考え方は人それぞれなので否定はしませんが、リベラルや左派の人たちといえば「平等を重んじ、どんな仕事も大切」と言っているイメージがあります。そうした中で、農業や農薬に携わる人々の仕事を否定するような言い方はどうなのかな、とも感じました。

左派の色が付いた反科学的な発言に関しては、概ねテレビなど大手メディアも、多少反科学的な要素が含まれていても寛容だった印象があります。

一方で保守寄りの右派の人たちは、それに対して無反応、無関心であるように見えました。

「左派」「右派」それぞれのオーガニック

そんな中で現れたのが『参政党』です。保守的な人たちの政党ですが、この人たちがすんなりとオーガニック信仰を取り入れたんです。オーガニック信仰には「農薬は危険だ」「海外の食べ物は危険だ」といった、根拠があまり示されない主張も含まれていましたが、新興の保守層がそれを取り込んでいったわけです。

結果として、真逆の思想の人たちが同じ信仰を取り入れている状態になりました。ただ考えてみると、右派の人たちがこの考えを取り入れるのも不自然ではありません。過去にはドイツでナチスが台頭した際、「古き良きドイツ」「素晴らしいドイツの自然」という思想から有機農業に傾倒した歴史もあります。排外主義的な右派がオーガニック信仰をイデオロギーの柱にするのは、自然な流れとも言えるかもしれません。

つまり、左派の人たちのオーガニック信仰は「被害者意識的・市民運動的」な色合いがあり、右派の人たちのオーガニック信仰は「国粋主義的・伝統主義的」な色合いを持つ。どちらも科学的ではなく、左右両極が同じ信仰に行き着いているという状況になっています。

根拠の乏しいオーガニックを利用しているのは誰?

左派の人たちからは「もともと自分たちが票集めに使っていたのに」と不満の声も聞こえてきます。悔しい気持ちはわかりますが、まずは自分たちが根拠の乏しい反科学的なオーガニック信仰を利用していたことを反省すべきではないでしょうか。イデオロギーのために「中身がどうであれ利用する」という姿勢でいると、逆の立場の人に利用されたときに困るのは当然です。

ということで今日は、「オーガニック信仰は右派も左派もどちらも利用している」というお話をさせていただきました。いかがだったでしょうか。

ご意見・ご感想、質問などはSNSからお送りください。私、渕上桂樹のSNS『X』に送っていただくか、匿名質問サービス『mond』からでも構いません。

今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。またの機会にお会いしましょう。バイバイ。

イラストレーション:竹村おひたし

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