2025.9.11

あきたこまちRの噂の真実 渕上桂樹の『渕上ラジオ』(第10回)

渕上桂樹

農業コミュニケーター

あきたこまちR

パーソナリティ:渕上桂樹 農業コミュニケーター 

はい、どうも皆さんこんにちは。農業コミュニケーターの渕上桂樹です。今日も渕上ラジオやっていきたいと思います。今日は、秋田県が開発した新しいお米『あきたこまちR』についてお話ししたいと思います。

あきたこまちRの噂の真実『渕上ラジオ』(第10回)はこちらから聴けます

なぜこの話題を取り上げるのかというと、このあきたこまちRが一部の活動家から、あることないことを言われていて、ちょっとかわいそうなお米だからです。反対運動のようなことをしている人たちもいますが、実際にその人たちが発信している情報には、かなり誤りがあります。そこで今日は、できるだけ正確で正しい情報をお伝えできればと思います。

ブランド米は常に新しい品種として更新されている

あきたこまちRは、秋田県が開発したお米です。もともとの『あきたこまち』も秋田県で開発され、今でも多くの人に美味しく食べられています。秋田県だけでなく、各都道府県でもそれぞれのブランド米を開発し、改良を重ね、新しい品種として更新しています。

新しいあきたこまちや新しい『にこまる』といった形で更新していくのは珍しいことではありません。今回のあきたこまちRも、その流れのひとつです。これまで区別されていたあきたこまちRも、今後はあきたこまちとして流通するようになります。

カドミウムを吸収しにくい米の開発は長年の悲願

では、このあきたこまちRの特長は何かというと、「カドミウムを吸収しにくい」という性質を持っている点です。

カドミウムというのは重金属で、大量に摂取すると体に悪影響を及ぼします。秋田県内でも場所によっては、稲がお米としてカドミウムを吸収してしまう地域がありました。

しかし、現在は安全に食べられるようになっています。これは、生産現場の努力によるものです。現場レベルで水の管理などを行い、カドミウムを吸収しにくいように工夫してきました。そして実際に検査を行い、安全が確認されたお米だけが流通していたのです。ですから、これまで普通に安心して食べることができていました。

とはいえ、そのためには現場で大きな苦労がありました。ですから、このあきたこまちRのようにカドミウムを吸収しにくい性質を持ったお米は、秋田県の生産者にとって長年の悲願だったのです。

なぜ、反対運動が起こったのか?

では、これがなぜ反対運動の対象になったのか。ひとつは、ちょうど品種切り替えのタイミングだったこと。そしてもうひとつは、「放射線を使った育種だから危険だ」という理由です。ただ、放射線を使ったといっても、お米に放射性物質が含まれているわけではありませんし、食べるお米に放射線を当てているわけでもありません。「遺伝子が変わるから危険だ」という声もありますが、そもそも品種改良とは遺伝子が変わるものです。他のお米と何ら変わるところはありません。

放射線が使われているといっても、食べるお米そのものに放射線を照射しているわけではありません。ですから、安全性に疑問があるという話では本来ないはずです。にもかかわらず、注目されやすいという理由から反対運動のターゲットにされてしまいました。

1950年代から放射線による育種は様々な作物に使われてきた

そもそも、この放射線を使った育種技術は1950年代から利用されてきたものです。実際に市場に出たお米としては、1966年に『レイメイ』という品種が登場し、流通してきました。放射線によって突然変異、つまり性質の変化が起こることは、自然界でも日常的に起きています。これはあきたこまちRに限ったことではありません。

放射線を使わなくても遺伝子は変化しますし、その性質の変化を利用しているのが普通の品種改良です。ですから、何も特別なことではないのです。さらに、この放射線育種の技術は、あきたこまちRだけでなく、全国各地のさまざまなお米に使われています。私が住む長崎県のお米、にこまるにも使われていますし、お米以外でも『二十世紀梨』などに利用されています。それなのに、あきたこまちRだけを取り上げて騒ぐのはおかしなことです。しかし、SNSで誤った情報が広まり、それを真に受けた人が秋田県や生産者に電話をしてクレームを入れるという事態になっています。これは生産者や関係者にとって大きな迷惑です。つまり、あきたこまちRをめぐる問題は、こうした誤情報によって第三者が迷惑を受けている、という構図なのです。

いじめのようにあきたこまちRに反対運動をするのは悪質

この件については、NHKや秋田県も公式に「危険なものではない」「あきたこまちRだけが特別ではない」と丁寧に発表しています。ですから、まずはそういった公式な情報を見ていただくのが良いと思います。

反対運動の発信源となっているのは『OKシードプロジェクト』という団体で、他にもいくつかの団体が関わっています。「危険かもしれない」と主張するのであれば、放射線を使った同じ技術による育種は、あきたこまちRだけでなく全国各地で昔から使われているのですから、すべてに反対すべきです。そうであれば、まだ筋は通ります。

しかし、秋田県が作ったお米だけをターゲットにして批判するのは、私は悪質だと思います。

さらに、あきたこまちRは危険ではないという公式発表があった場合、本来であれば「そうだったんですね、危険じゃなかったんですね」と納得するか、「それでも危険だと思う」と自分の意見を述べるかのどちらかで済む話です。ところが実際には、「品種改良の切り替え方が問題だ」「表示されていないのは知る権利の侵害だ」といった具合に、次々と論点を変えて批判を続けています。原因がなくなっても新しい原因を作り出してくるやり方は、まるでいじめのようだと感じます。私は、発言内容が正しいか間違っているか以前に、このやり方そのものが卑怯だと思います。

不安をあおる情報をみたら、公共機関の公式サイトで確認

特に、発信源となっているOKシードプロジェクトという団体については、不安をあおるような発信ばかりしなくても良いのではないかと感じます。しかし、世の中にはそうした不安をあおる人たちも存在します。だからこそ、皆さんには不安な情報を見かけたときこそ、公式な情報を確認してほしいと思います。

あきたこまちRであれば、秋田県の公式サイトに非常に丁寧でわかりやすい説明が掲載されています。疑問に思った場合は、ぜひそちらを見ていただくのが良いと思います。というわけで、今日はあきたこまちRについてお話ししました。

渕上ラジオでは、皆さんからの質問にお答えしています。私のSNS、『X』宛てに送っていただいても構いませんし、匿名質問サービス『mond』に送っていただいても大丈夫です。お気軽にお寄せください。今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。また別の機会にお会いしましょう。バイバーイ。

イラストレーション:竹村おひたし

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